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インタビュー

Interview

地形学者・木村颯が語る──水中洞窟3D測量とSidewinderの必要性

水中の世界を「立体モデル」として残す——。
そんな、一見するとSFのような研究を現実にしているのが、地形学者・木村颯さんです。

フォトグラメトリーという技術を用い、海底地形から沈船、そして水中洞窟まで、
さまざまな空間を精密に3D化してきました。
とりわけ水中洞窟の3D測量は、日本でも取り組む研究者が少ない、貴重で挑戦的な分野です。

しかし、水中洞窟の調査では、
「自分の吐いた泡で視界がゼロになる」
という、避けることのできない壁が存在します。
この問題を解決し、さらに調査範囲を広げるために選ばれたのが、
今回のテーマである KISS Sidewinder(サイドワインダー)。

「テクニカルダイビングの先にある“研究としてのダイビング”」
そのリアルを、木村さんに語っていただきました。


プールトレーニング数日で安定感のある木村さん


リブリーザーインストラクター加藤大典

■ フォトグラメトリーと水中洞窟測量への挑戦

――木村さんは地形学者としてフォトグラメトリーを用いた調査をされていますが、具体的にはどんな活動を?

地形学者 木村颯さん

私は、水中の景観を3次元的に記録するフォトグラメトリーを使い、海底地形や沈没船、そして水中洞窟などを測量しています。
中でも特に力を入れているのが、水中洞窟の3D測量です。

しかし、水中洞窟では自分の吐く泡が天井に当たるだけでも濁りが発生し、視界がなくなるという大きな問題があります。
これではオープンサーキットでの調査は思うように進みません。

リブリーザーインストラクター加藤大典

■ CCRを選択した理由 ――そこでCCRの必要性を感じたわけですね。

地形学者 木村颯さん

はい。調査を続ける中で、「行動範囲を広げ、濁りを抑えるにはCCRが不可欠」と判断しました。
もともと水中洞窟での探検や調査のためにテクニカルダイビングを始めましたが、目的を達成するには限界を感じていました。

ただ正直に言えば、当時は
・オープンサーキットのサイドマウントでも満足いくトリムが取れない
・リブリーザーの事故例も耳にしていた
ことから、不安な気持ちもありました。


リブリーザーインストラクター加藤大典

■ 講習で感じた「安全性への確信」 ――その不安は、講習を通じて変化しましたか?

地形学者 木村颯さん

大きく変わりました。
座学やトレーニングを通じて、MCCR、特にSidewinderは要点を守れば安全に運用できる機材だと理解できました。

仕組みがシンプルだからこそ、落ち着いて対処すればリスクを管理できる。
その安心感があったので、実際のダイブでも落ち着いて潜れました。

リブリーザーインストラクター加藤大典

■ 初めて味わった「静寂のダイビング」

――実際にSidewinderで潜ってみて、最も印象に残った点は?

地形学者 木村颯さん

間違いなく「静かさ」です。
泡の音がないだけで、こんなにも感覚が変わるのかと驚きました。

わずかな時間でしたが、水中で静寂に包まれながら浮遊するあの感覚は、
これまでのダイビングでは味わったことのない心地よさでした。

その静けさの中ではアウェアネスも広がり、
「これは調査にも安全性にも大きく役立つ」と実感しました。

リブリーザーインストラクター加藤大典

■ 苦戦した要素と、つかんだ手応え ――逆に、難しく感じた点はありますか?

地形学者 木村颯さん

いちばん難しかったのは中性浮力です。
前半は呼吸量で調整できない感覚に対応できず、浮き沈みを繰り返してしまいましたね。

ただ、トラブルトレーニングでは冷静に対応でき、
最終的には不安なく一本のダイブをやり切ることができました。

海洋でレスキュートレーニングに励む木村さん


リブリーザーインストラクター加藤大典

■ 課題が見えたからこそ、未来につながる

――講習全体を振り返って、どんな学びがありましたか?

地形学者 木村颯さん

まだ“快適”と言えるレベルではありませんが、
逆に、今後の課題と目指すべき姿を明確に描けたことが最大の収穫です。

「調査のためにどんなスキルを身につけるべきか」がハッキリしたので、
このタイミングで受講できて本当によかったと感じています。

これからも、目標とするダイビングができるよう精進していきます。

リブリーザーインストラクター加藤大典

水中洞窟の3D測量という、専門性も責任も大きい分野に挑む木村さん。
今回のインタビューからは、
「不安を抱えながらも、一歩ずつ学びを積み重ねた姿」
「研究のために必要な技術へ正面から向き合う姿勢」
が強く伝わってきました。

CCR、とくにSidewinderは“特殊な探検家だけの道具”ではありません。
しっかりと基礎を積み、ポイントを押さえれば、
木村さんのように 冷静に・安全に・目的を持って使いこなすことができる機材 です。

今回の講習で得られた「静かな視界」「広がるアウェアネス」、
そして「明確になった課題」は、今後の研究活動の大きな武器になるはずです。

私たちも全力でサポートしますので、
ぜひこの技術を活かし、これからのフィールドワークにさらに広い可能性を開いていってください。
次のプロジェクトをご一緒できる日を楽しみにしています。