アドバンストナイトロックスダイバーコースのコーススタンダードを読み解く
加藤大典ブログ
代表の加藤です。
今回はTDIのテクニカルダイビングコースの入門コースといえるアドバンストナイトロックスコースについてのお話です。
このコースの価値を考えていくと、なかなか悩ましいコーススタンダードで読み解くのが難解です。
今回は、このコースの価値やどんな器材コンフィギュレーションがいいのか考えてみたいと思います。
アドバンストナイトロックスとは?
アドバンストナイトロックスダイバーコースは、減圧停止不要潜水の範囲で、浮上時に酸素濃度の高いナイトロックスや酸素を使用し、窒素を酸素で押し出すように加速減圧することが目的です。
ボトムで呼吸するガスが、ナイトロックスではなく、エアを使用するような環境や、窒素がたくさん溜まってしまうような潜り方を行う場合に有効な方法でもあります。
また次のコースとなる『減圧手順ダイバーコース』と組み合わせることで、テクニカルダイバーとして基本となる潜り方を身につけていくことができます。
つまり、酸素40%以上のナイトロックスや酸素を安全に利用するために、様々な活用法があります。
そのためにスタンダードについて解釈が明確でないように感じてしまいます。
今回はテクニカルダイビングに進むためでなく、通常のダイビングの中で、アドバンストナイトロックスのノウハウを活用するためのトレーニングと器材コンフィギュレーションについてお話しします。
アドバンストナイトロックスダイバーコースをバックマウントシングルシリンダーで開催する場合の器材について
まずコーススタンダードを確認してみると必要器材には、
『プライマリレギュレーターに接続されたオルタネイトセカンドステージオクトパス、もしくはリダンダントスキューバユニット; 1.9L(13ft3)以上』とあります。
つまり器材としては、プライマリレギュレーターに接続されたオルタネイトセカンドステージオクトパスとあり、これは一般的なスクーバユニット(1つのシングルシリンダー+1つのファーストステージ+2つのセカンドステージ)でもよいと記載されています。
しかし水中スキルには、
『プライマリレギュレーターのフリーフローをシャットダウンサイクルによりコントロールし、バックアップレギュレーターへの交換をデモンストレーション』とも記載されています。
ここでスタンダードを読み解きながら??となってしまいます。
水中ドリルをクリアするためには、ボトムで呼吸できるリダンダンシーガスが必要になります。
つまり装備としては、プライマリースクーバユニット+リダンダンシースクーバユニット+デコ用ユニットという装備でなければいけなくなります。これがシングルバックマウントの場合に必要な装備となると思います。
ということは、一般的なスクーバユニットとデコ用ユニットだけではNGとなると考えられます。
しかし、そうではありません。次のような運用も可能ではあります。
SDITDIアメリカ本部のトレーニング部のブライアン・シーブさんと話し合ったところ、
『このコースを、シングルタンクバックマウントシステムでコースを受講する場合、ダイバーは、必要なスキルを実施するために、潜水中の深度で呼吸しても安全なミックスの入ったポニーボトルかステージボトルのどちらかが必要になります。
50%のようなナイトロクスミックスや純酸素はこの必要条件を満たしていませんが、より深い深度のMODで使用できるミックスはボトムガスとして満たすこともできます。なにかはっきりしないスタンダードとも読み取れますが、このコースで講習生にとって重要なポイントはこのレベルで真のリダンダンシーとは何かを検討し始める段階であり、まだアドバンストナイトロックスコースは減圧潜水も認められていません。よってそこまで厳しい基準を要求しているわけではないということになります。』
コーススタンダードとして、トレーニングの最大深度は40mまでとありますが、達成しなければならない深度はありません。
このコースを最大深度18mで開催してもスタンダード上問題ではありません。
ですから、トレーニングの最大深度を25mとして、ボトムをエアを使用し、デコガスをEAN40とするなら、デコガスをバックアップガスとして使用できますから、コーススタンダードとしてはクリアとなります。
しかし考えなくてはならないのは、次のコーススタンダードです。
修了者に与えられる資格
このコースを修了後、講習生は次のような条件下で直接監督なしで酸素21%~100%のEANを用いたダイビング行うことができます:
1. ダイビング内容が、トレーニング内容と同様
2. 活動地域が、トレーニング環境と同様
3. 環境条件が、トレーニング環境と同様
トレーニング内容やトレーニング環境とは、アドバンストナイトロックスダイバーコースで行われるトレーニング内容ということになります。
つまり、先ほどの内容で認定されたダイバーについて考えますと、
深度の浅い範囲で、シンプルな装備でしかトレーニングされていないことになります。
そのADナイトロックスダイバーが、認定後、活動する範囲がトレーニングと同等であるのなら、先ほどの内容でも問題はないかもしれません。
しかし、そのダイバーの活動範囲を考えたときに、トレーニング内容をミニマムで完了することは、賢明とは言えません。
担当するインストラクターもダイバーもこのコースのカリキュラムについてはよく検討する必要がありますね。
私個人の考え方としましては、せっかくのアドバンストナイトロックスコースですから、EAN50やO2を使用してこのコースでのメリットを講習生が享受できるようなコース内容にすることは大切ではないかと考えます。
またテクニカルインストラクターの中には、シングル装備よりダブル装備(バックマウントダブルやサイドマウントダブル)で、このコースに参加したほうが、器材コンフギュレーションも優れているし、効果的と考える方もいます。たしかにどちらが理にかなっているかといえば、ダブル装備になります。
しかしこのアドバンストナイトロックスは本格的なテクニカルダイバーだけのものではありません。
つまりダブル装備は使用しないが、シングル装備で、加速減圧(減圧停止不要限界範囲)を行う必要性のあるダイバーの場合は、シングル装備でダイブプラン内容に対して、適切な器材コンフィギュレーションを考える必要があります。
ダイビングの安全とは、型にはめて思考停止するのではなく、毎ダイブごとに、どうしたら、より安全で快適かを考え意識し続けていくことだと思います。
改めて最後に強調したいのは、
そのADナイトロックスダイバーがどのように運用するのかで、コースのトレーニング内容や器材についてよく相談して検討しなければならないということです。
今、私の環境はナイトロックスが自由に作れる環境になり、エアのシングル装備に酸素という組み合わせはあまり使用しなくなりましたが、以前、エアが最も使いやすい環境の時には、酸素を安全停止中に使用できることは大きなメリットでした。
きっとテクニカル以外でもアドバンストナイトロックスを必要するダイバーさんたちもいると思います。
例えば深度40mに潜るガイドやダイバーの場合は、安全停止中に、濃いナイトロックスや酸素を呼吸できることは、減圧症予防として大きな安全マージンになります。
このコースとトレーニングで必要なことをマスターして安全で効果的なダイビングを行っていただけたらと思います。
written by かとう だいすけ
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